北海道日本ハム・ファイターズが新球場建設を正式発表、2023年シーズンから本格稼働へ

 プロ野球の北海道日本ハム・ファイターズが北広島市に念願の新スタジアムを建設することが正式に発表されたと NHK が報じています。

画像:『北海道ボールパーク』の外観図

 開閉式のドーム球場であり、寒さと積雪に対応したデザインになっていると言えるでしょう。課題はアクセス面となっていますが、球場施設の魅力度は格段に上がることが予想されるため、球団の価値は高くなる見通しが大きいと言えるはずです。

 

 プロ野球・日本ハムが新たな本拠地としておよそ600億円をかけて北広島市に建設する新球場は、プロ野球の球団の本拠地では初めて防災拠点機能も兼ね備えた施設になることが決まりました。

 (中略)

 新球場は、観客の収容規模が3万5000人で、天然芝と雪が落ちやすい「切妻屋根」が採用され、屋根はスライドさせて開け閉めする方式となっています。

 札幌ドームの収容規模(プロ野球開催時)が約4万人ですので、それよりも5千人少なくなります。しかし、「自前スタジアム」というメリットを軽視することはできません。

 臨場感が大幅に増す訳ですから、顧客満足度は向上することでしょう。また、球団側も利用料の支払いから解放されるため、球団経営という点で大きな追い風を得られることが予想できるからです。

 

“積雪・寒冷地仕様のドーム型スタジアム” の先行モデルとなるか

 札幌ドームを保有する札幌市がファイターズを冷遇し続けたこともあり、移転が正式に決定されました。発表された新球場のデザインは「積雪・寒冷地仕様」となっており、ファイターズの本気度を伺い知ることができます。

 積雪に対しては “切妻屋根” を採用することで屋根の雪を落としやすくしています。落とした雪は融雪後に排水することで処分が可能ですから、運営コストを考慮することが今後の課題と言えるでしょう。

 次に、寒冷地対策としては「開閉式のドーム球場」を解決策にしています。ただ、球場は天然芝で運営することが発表されているため、寒冷地に適した芝の養生が求められることになります。

 いずれも、過去に前例のないことが懸念点となっていますが、不可能と言われていないことが注目点でしょう。なぜなら、運営面で結果を残すことで『先行モデル』となるポテンシャルを有しているからです。

 “積雪・寒冷地仕様のドーム型スタジアム(天然芝)” が成り立つなら、Jリーグの日程を欧州と同じ秋春制にすることが可能になります。また、寒さの厳しいヨーロッパやアメリカのスポーツチームに『先行モデル』を “売る” ことが可能になるのですから、夢は広がると言えるでしょう。

 

自前スタジアムを持つことで経営の自由度が高まることは大きい

 ファイターズが『自前スタジアム』を保持することに拘った理由は「経営の自由度を確保するため」です。これはソフトバンクや DeNA が証明済みであり、球団経営を「ビジネス」として捉えると当然の判断なのです。

 球場を自治体などから借りていた場合、不便な点を改善してもらうことは困難です。なぜなら、「公共物であり、特定の利用者が利する改修はできない」との “大義名分” で拒否されてしまうからです。

 また、近隣に代替施設がないことで足元を見られ、割高な利用料を支払いを要求されるリスクもあります。

 しかし、『自前スタジアム』を保有していれば、所有者からの “横槍” を受ける心配はありません。スタジアムで提供するサービスの売上高がそのまま自分たちの収益となる訳ですから、アイデアやビジネスプランの策定により力が入ることでしょう。

 「利害が一致するパートナーと組むこと」がビジネスを成功させる上では重要です。

 札幌市が欲しているのは「札幌ドームを本拠地にするプロ野球球団」であり、「日本ハム」である必要はありません。極端な話、「日ハムが経営難でファイターズの運営から手を引いても、後継球団が札幌ドームを本拠地としてくれれば、何の問題もない」というスタンスなのです。両者が袂を別つことになったのは当然と言えるでしょう。

 

『防災拠点機能』とすることを「アクセス問題の改善策」とする斬新さ

 ファイターズが北海道・北広島市に建設する『北海道ボールパーク』が抱える最大の課題は「アクセス問題」でしょう。公園内に新設するのですから、アクセス面が整い切っておらず、渋滞を始めとする交通問題が浮上することは明らかだからです。

 ただ、この問題に対しては『防災拠点機能』を新球場に持たせることで、道路などの交通網を整備するための費用を自治体側から引き出すことに成功しています。

 “防災上の拠点” は必要ですし、災害時に防災拠点を機能させるには「日頃からメンテナンスを行っていること」が必須です。この部分をファイターズと自治体が上手く折半することができれば、自治体との新しい形での共存関係を築くことが可能になるでしょう。

 プロ野球のオフシーズン期における新球場の活用方法は、「周辺施設の活用」が大きなポイントです。冬季の寒さを考えると、「鉄道」よりも「自家用車」でのアクセスを念頭に置く必要があるため、交通網の整備が重要になると言えるでしょう。

 

 一方で、ファイターズに脱出された札幌市は厳しい立場に置かれることになりました。なぜなら、高額な利用料を支払ってくれるプロ野球が不在になることで、札幌ドームの採算が悪化することが確実となったからです。

 プロ野球の公式戦を誘致しようにも、北海道が「ファイターズの保護地域」であるため、拒否権を発動される可能性があることに留意しなければなりません。もし、札幌市が「札幌ドームの利用値上げ」という嫌がらせをするなら、『保護地域』を使った報復に出ることを認識させておく必要があると言えるのではないでしょうか。