国民生活への多大な負担となっていた FIT を終了させるため、経産省がようやく重い腰を上げる
NHK によりますと、経済産業省が再生可能エネルギーを対象とした FIT (= 全量固定買取制度)を終了させる方向で調整に入ったとのことです。
電力消費者の年間負担額が2兆円を超えていることに加え、負担額はさらに増加する見通しでした。再生可能エネルギーに対するニーズが市場にある訳ではない状況で、消費者に強制購入をさせていた現状が是正されるのは当然と言えるでしょう。
経済産業省は太陽光や風力で発電した電力を、国があらかじめ決めた価格で大手電力会社が買い取る制度を終了させる方向で調整に入りました。かわりに価格競争を促す新たな仕組みの導入を検討しています。
(中略)
電力に占める水力を除く再生可能エネルギーの割合は、制度が始まる前の2011年度の2.7%から2017年度には8.1%まで増加しています。一方で、買い取りにかかる費用は電気料金に上乗せされることから、家庭や企業の負担は今年度、2.4兆円に達し、標準的な家庭の負担額は年間で9200円余りに膨らむ見通しです。
「再生可能エネの普及による負担を全消費者に押し付ける」という状況が改善されるのは朗報
FIT で問題のは「消費者側に選択権が存在しないこと」でしょう。なぜなら、発電コストが高い太陽光や風力といった電源による電力を消費者は強制的に購入させられていたからです。
この制度で得をするのは「FIT を使って高値で売電できる事業者」と「事業者から広告収入を得るマスコミ」および「再生エネ関連に熱心な政治家」に限定されます。
その一方で、消費者は「市場価格の4倍もする電力を強制的に購入させられる」という事態に見舞われているのです。『弱者の味方』を名乗る政党やマスコミがこの問題にノータッチだったことが『再生エネ界隈の闇』を如実に現していると言えるでしょう。
2030年の再生可能エネルギーの発電割合は「現在の2倍」が目標値であり、電気代は上昇の要素が強い
経産省が「FIT の終了」を視野に入れて動き出した理由は「費用負担が重くなり過ぎたから」でしょう。なぜなら、FIT による負担は今後も重くなることが確定的だからです。
水力発電を除く再生可能エネルギーの発電割合は 8.1% ですが、家庭や企業の FIT による負担は年間 2.4 兆円です。2030年の目標値は「発電割合で約16%」となっており、現在の倍です。
また、FIT の負担は年 2.4 兆円から年4兆円にまで伸びることが資料(PDF)にも記されています。
FIT は電力消費者の負担として跳ね返って来ます。日本の年間防衛費と変わらない金額を「再生可能エネルギーを普及させるため」との理由に強制的に支払わせる制度が消費者から理解を得ることは簡単ではありません。
制度そのものを「打ち切る方向」で法改正が検討されるのは当然ですし、「ようやく重い腰を上げた」と言えるレベルだと言えるでしょう。
再生可能エネが「将来有望」や「応援したい」と思われているなら、市場での競争でも生き残りは可能
太陽光発電や風力発電が「将来有望」と思われていたり、「応援したい」と考えている人がいるなら、市場での競争に生き残ることは十分に可能です。
その理由は「再生可能エネルギー普及のために高値の電気料金を進んで払う顧客がいるはずだから」です。
もし、そうした顧客がいないなら、再生可能エネルギーは行き詰まるでしょう。しかし、これは『電力自由化』を進めた結果なのですから、受け入れなければなりません。
自由化した市場では「企業には価格設定の決定権」があり、「消費者には購入先の決定権」があるのです。FIT はこの両方を阻害する制度なのです。供給義務を負わない再生エネ発電事業者が既存インフラに “タダ乗り” すれば、ぼろ儲けができるのは当然です。
監督官庁である経産省が是正に向けて動き出したことは評価すべきでしょう。経済の重要基盤である電力供給を「安定的にリーズナブルな価格」で維持する制度設計にどれだけ修正することができるのかに注目と言えるのではないでしょうか。