安倍首相がムン・ジェイン大統領に「徴用工問題は解決済み」と直接言及したことが歓談の成果

 『ASEAN+3』のためにタイを訪問中の安倍首相が韓国のムン・ジェイン大統領との歓談を行ったと NHK が報じています。

 両国の発表内容は異なっていますが、日本側は安倍首相が「徴用工問題は解決済み」とムン大統領に直接言及したことが成果と言えるでしょう。

 なぜなら、ムン大統領の取り巻きは「韓国にとって都合の悪い情報」を報告していない可能性があるからです。「進展はなかった」と言わざるを得ない状況ですが、韓国に蔓延する「日本が譲歩する」との変な期待感を払拭したことはプラスと言えるはずです。

 

 タイを訪れている安倍総理大臣は韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領とおよそ10分間ことばを交わしました。先の即位礼正殿の儀(そくいれい せいでんのぎ)へのイ・ナギョン首相の派遣に対する謝意とともに「徴用」をめぐる問題は日韓請求権協定に基づき解決済みだという日本の立場を伝えました。

 

「日本が譲歩するから、押せば何とかなる」との考えで動く韓国

 韓国の外交方針には「相手側のトップ(=この場合は安倍首相)から譲歩に関する発言を引き出せば何とでもなる」との考えが根底にあるのでしょう。だから、首脳会談に異常なまでの期待感を示していたのです。

 これまでの日本は「事勿れ主義」が強く、韓国からの不満にはほぼ全ての面で譲歩して来ました。言いがかりがあっても譲歩を選択していたのですから、韓国側が「押せば何とかなる」と考えるのは自然な流れです。

 しかし、その姿勢が度を越していたため、韓国の横柄な振る舞いが日本の世間一般層から嫌悪される事態を招くことになりました。

 この事実は報道各社の世論調査で浮き彫りとなっており、否定することができない現実と言わざるを得ないでしょう。つまり、韓国側が “従来方針” を転換しなければ局面を打開することはできない状況なのです。

 ところが、韓国政府は取り巻きや親韓派の “甘言” を真に受ける有様です。だから、「対話による解決の姿勢を示せば十分」との間違った対応を平気で行い、日本の世論に批判を呼び込む行為を平気で行ってしまうのでしょう。

 

日本側が要求しているのは「韓国政府の行動」であり、「韓国政府との対話」ではない

 韓国は「対話によって事態は収束可能」と考えているようですが、日本側は「対話で解決できる段階は過ぎ去った」との認識です。

 なぜなら、徴用工問題では「日韓基本条約に違反する」と考えた日本政府が協定に基づく形で仲裁委員会の設置(= 対話)を要求しましたが、韓国は拒否しました。したがって、日本側が「韓国とは対話による解決は不可能」と考えるのは当然です。

 しかし、韓国側にこの認識はありません。だから、両国間の認識に決定的な溝が生じることとなり、双方の主張が平行線のままなのです。

 日本国内には「根気強く対話をすべき」との考えの人もいるでしょう。ただ、被害を受けている側の日本が辛抱強く対話を呼びかけている間に “韓国を利する” ことになる違法状態が「既成事実」として積み上げられてしまう問題も横たわっているのです。

 条約を守る気のない韓国に配慮を示すことは日本の国益を損ねる行為に他なりません。そのため、現在よりも厳しい姿勢を示すことに理解を示す有権者が多いことが報道各社による世論調査で示されていると言えるでしょう。

 

ムン・ジェイン大統領が「取り巻きや親韓派の甘言」ではなく、「安倍首相の意向」を直接知ったことは成果

 タイでの日韓両国首脳による歓談が行われたことの唯一の成果は「ムン・ジェイン大統領が安倍首相の意向を直接知ることができた」という点でしょう。

 日本が重要視しているのは「日韓基本条約が遵守されていること」であり、徴用工問題でも「基本条約を遵守した対応を “韓国政府が” やらなければならない」との立場が直接伝達されたからです。

 しかも、安倍首相の独断ではなく、「韓国に対して譲歩は不要」との後押しもあるのです。「国益に沿わない不人気政策」を強行する政権は世界中を見渡しても存在しないでしょう。この認識を対日政策に反映することができるかがムン・ジェイン大統領に問われているのです。

 韓国側が期待するだけの「進展」を手にすることは非現実的です。条約を無視している国に “配慮” を示す意味はありませんし、他の諸外国との関係性が悪化する要因にもなってしまうからです。

 

 現在の韓国政府は「重度の虚言癖」と言わざるを得ないほどの外交姿勢を見せています。

 第三国に該当する国々は「立場が異なる当事国の主張」を細かくチェックすることに労力を割くことは稀なのですから、韓国政府の虚偽発表は指摘を怠らないようにする必要があると言えるのではないでしょうか。