日韓の貿易管理を巡る局長級対話が3年半ぶりに開催されたことは評価できるが、それだけで輸出管理強化措置を撤回する理由にはならない
12月16日に3年半ぶりに日韓輸出政策対話が開催され、梶山経産相が評価するコメントを述べたと NHK が報じています。
日本が韓国に開催を何度も呼びかけたにも関わらず、政策対話は3年半にも渡って開かれなかったのです。その点が改善されたことは評価されるべきと言えるでしょう。
しかし、「開催されたこと」は日本の輸出管理強化措置を撤回する根拠にはなりません。韓国側が『日本から要求されている項目』を満たすかは不透明であり、現状はスタートラインに立ったに過ぎないからです。
16日、3年半ぶりに開かれた貿易管理をめぐる日韓の局長級の政策対話について、梶山経済産業大臣は「対話できたこと自体が一つ前進であると思う」と述べ、今後も対話を継続し、お互いの信頼を積み重ねていくことが重要だという認識を示しました。
(中略)
そのうえで、韓国側が求めている日本の輸出管理強化の措置の撤回については「対話を重ねていけばいずれ見直しにつながる可能性もあるが、きのうの時点ではまだそういう状況にはなっていない」と述べ、韓国側の管理体制などの改善状況も踏まえながら今後判断していくという考えを重ねて示しました。
「3年半ぶりに要求が満たされたこと」を評価するのは “社交辞令” に過ぎない
日本は『韓国の輸出管理体制』に疑問を持っていたため、政策対話の場で問い質そうとする思惑がありました。しかし、韓国側が対話を拒絶。“横流しが可能な国” に無条件での輸出を許可する訳には行かないため、輸出管理の強化に踏み切ったのです。
したがって、韓国側が要求する「日本による輸出管理強化措置の撤回」を実施するためには “複数のハードル” を韓国が乗り越える必要がある状況と言えるでしょう。
「対話の再開」はその第1歩に過ぎません。なぜなら、韓国は日本が3年半に渡って求め続けていた回答を出す気になっただけだからです。
回答内容が不十分なら、日本の輸出管理強化は現状が維持されます。つまり、韓国の望む結果になるかは「韓国の対応次第」なのです。
日本の梶山経産相が「対話が行われたことが成果」と述べているのは社交辞令に過ぎません。回答すらしなかった国が「回答の意欲」を見せたことを称えるのは “大人” としてのマナーと言えるでしょう。
日本には「急いで韓国への輸出管理強化措置を撤回する動機」が見当たらない
日本が「韓国への輸出管理を強化する」と発表した際、以下の3点を主な理由としてあげました。
- 政策対話が一定期間に渡って開かれず
- 大量破壊兵器への転用可能物質に対する韓国のキャッチオール制度に不備
- 輸出審査・管理の人員に関する脆弱性
韓国では「3については増員予定」、「1は(16日に)対話を行った」との理由で『強化措置の撤回』を日本に求める論調が出ています。ただ、2の「キャッチオール制度」は手付かずの状況ですし、人員も「増員の予定」が表明されただけで具体的な動きはありません。
要するに、日本側が急いで『韓国に対する輸出管理強化の措置』を撤回する根拠もなければ、動機も見当たらない状況なのです。マスコミ各社の世論調査も「韓国への輸出管理強化は当然」と出ているのですから、韓国の要望を満たしてところで政治家のポイントにはならないのです。
したがって、「韓国が要求項目を満たすまでは放置」という選択肢が採られる可能性が高いと言えるでしょう。
「対話を重ね、制度上の不備を是正することが重要」と日本の親韓メディアが言及することが重要
日韓両国の良好な関係性を本当に願っているなら、そう願うマスコミが先頭に立って「政策対話を重ね、指摘された制度上の不備を是正することが重要」と正論を説かなければなりません。
ところが、そうした動きは皆無に近いことが問題です。輸出管理については日本が「韓国の制度に不備がある」と指摘していますが、親韓の立場を採る日本のマスコミは「言いがかり」だとの文句も付けていないのです。
有識者に「日本政府の解釈に問題がある」と語らせる手法で批判することが定番のマスコミがその手口を使っていないのですから、韓国で運用中の制度に不備があるのは否定できない事実なのでしょう。
つまり、「欠陥を見過ごせ」と主張する韓国への対処策が問われているのです。「不備ではない」と主張するなら、政策対話の場で法的根拠を示して証明する責務は韓国にあります。
「不備ではない」との発言は何の担保にもならないのですし、その発言を信じたことで生じた問題の責任を韓国は負わないのです。
「韓流コンテンツ」や「韓国発のニュース」を収益とするマスコミは “自社の収益” のために韓国の顔色を伺う訳ですから、その点を踏まえた判断をする必要が政府にはあると言えるのではないでしょうか。