4年前の圧力方針が失敗した中国政府、今回は圧力を自粛するも香港情勢によって蔡英文総統が台湾・総裁選に再び勝利

 NHK によりますと、11日に台湾で行われた総統選挙で現職の蔡英文総統が再選されたとのことです。

 また、議会・立法院も与党の民進党が過半数を維持しています。中国政府は4年前の圧力戦略が裏目に出たため、今回は直接的な動きは自重していました。ただ、香港への強気な対処が間接的に裏目に出たことは否定できないと言えるでしょう。

 

 台湾では11日、総統選挙が行われ、現職の与党・民進党の蔡英文総統が、過去最多となる800万を超える票を獲得して再選されました。同時に行われた議会にあたる立法院の選挙も民進党が過半数を維持し、中国に対抗する姿勢で臨むことが支持された結果となり、今後、蔡総統と中国がどのように向き合っていくかが焦点となります。

 

蔡英文総統の再選を中国政府がアシストすることになったという皮肉

 中国政府は「台湾は中国の一部」との立場を示し、様々な圧力をかけています。『1つの中国』の原則を掲げ、4年前に行われた総統選挙の前には台湾海峡を中国海軍の空母が通過したり、経済面での締め出しを匂わせるなど直接的な行動に出ていました。

 しかし、台湾の総統選は中国政府が望んだ結果にはならず。蔡英文氏が総統に当選しました。

 そのため、中国政府は前回の反省を活かし、今回は台湾に対する直接的な行動を自粛して来ました。ただ、民主化を求める香港に対して強硬な姿勢を採ったことが台湾で逆効果として機能してしまいました。

 『一国二制度』であっても、中国の影響下に入ると香港のような対応を採られることは目に見えています。だから、無党派層にも支持が広がり、再選の原動力になったのでしょう。中国政府にとっては裏目に出る結果になったと言わざるを得ないでしょう。

 

台湾が中国政府への接近を拒絶する姿勢を示したことは日本にとって朗報

 「中国政府と距離を取る」との姿勢を示す蔡英文総統が再選したことは日本などの海洋勢力にとって朗報と言えるでしょう。なぜなら、台湾が中国の “先兵” となる可能性が低くなったからです。

 韓国のように「『民主主義勢力』を名乗りながら『中国政府の代弁者』として活動する国」は厄介な裏切り者に過ぎません。

 台湾は有権者が『中国政府の代弁者』になることを拒絶しました。直接的な圧力は効かなかったですし、香港に対する強硬手段も台湾の国民には「中国との『一国二制度』は吸収に向けた布石」との印象を残す結果となりました。

 中国と対峙する最前線に立つことを選択した台湾ですが、置かれている立場としては日本も同様です。したがって、今後の政治・経済の舵取りは日本と似ることでしょう。そのため、政治家の能力が大きく問われる状況になると考えられます。

 

「半導体以外の産業が育つか」が台湾の直面する課題

 台湾は TSMC が半導体事業を牽引していますが、中国が人材の引き抜きを行い、アメリカのグローバル・ファウンドリーズ(GF)とは訴訟合戦の状況にあります。

 「半導体を台湾で製造し、製品の最終組み立て工場に出荷するビジネスモデル」であり、現状では大きな収益を確保することは容易でしょう。ただ、米中双方が利益を自国にもたらしたい思惑があるため、現状維持も徐々に難しくなると予想されます。

 したがって、半導体事業以外の産業を育てることが今後の課題となるでしょう。半導体がもたらす利益がありますから、これを上手く活用できるかが注目点と言えるでしょう。

 規模と距離で魅力的な中国市場は当局から嫌がらせを受けるリスクがあるため、「嫌がらせに耐えられること」が必須条件になります。距離的に近い台湾が経済的に成功しているのですから、沖縄も台湾を成功事例として研究し、成長プランを策定する必要があるはずです。

 「香港の金融機能などの受け皿になる」というテコ入れ策が存在しているだけに、台湾の経済的な動きに注目する価値があると言えるのではないでしょうか。